スポーツは本当に楽しいのか?

私は残念ながら生まれつき運動神経が悪いようだ。家族を見渡しても残念ながら良さそうなのは一人もいないから遺伝なのかもしれない。父親は「私は昔テニスが得意だった」と豪語していたがどうも信憑性に乏しいし、母親は自他共に認める運動音痴である。弟は幼少の頃から非常に暗く外にも遊びに行かず部屋で芋虫のようにじーっと固まっていたような男である。運動神経がいいわけがない。

だから私も運動が苦手で子供の頃からスポーツにはいい思い出がない。

小学校の時の50メートル走。速いやつは6秒くらいで走っていたような気がするが、私は10秒くらいかかっていた。世界で一番足が速い人は同じ時間に二倍の距離を走ると知って、小学生にして早くも自分のスポーツの限界に気づいてしまった。

また小学校の時はバスケットの授業で誰もボールくれなかった。私にボールが渡るとすぐ相手に取られるからだ。私はいつもいいポジションにいたのだが、誰もパスしてくれない。見かねた先生が「○○君はいい場所にいるのだからみんなもボールをパスしなさい」と言ったのはありがたいのと同時に、気を使われているのが分かり非常に嫌だった。

中学校のときはソフトテニス部だったのだが下手くそなくせに生意気な私は顧問の先生と確執があった。顧問に嫌われていた私はみんながもらっていたジュースを一人だけもらえないなどの、露骨な嫌がらせを受けていた。私も負けじと影で「モアイ」とあだ名をつけるなどの反撃に出たが、所詮生徒と先生では力関係が決まっている。

高校もソフトテニス部に入っていたが、バスケ部やサッカー部などの花形スポーツを恨めしそうに見ながら、「別にうらやましくないし」と言うのがせいぜいだった。高校のクラブは体育会系的要素が限りなく薄く、いい意味で非常にゆるいクラブで楽しかったのだが、「熱血」とか「黄色い声援」とかスラムダンク的クラブ活動からは程遠かった。そもそも「ソフト」が頭についてしまった時点でなんか迫力に欠ける。

だいたい高校生くらいまでは運動できるやつがモテるのだ。私は運動は出来ない代わりに源平の合戦や戦国武将の姻戚関係にはやたら詳しかったが、こんなのは全くウリにならなかった。「平宗盛と知盛どっちが好き?」と聞いて、「うーん、あえて言うなら重盛かな。私真面目な人が好きなの。」などとマニアックな答えをいう女子などこの世にほとんど存在しないのだ。

社会人になってからは定番のゴルフもやらない。別にポリシーがあってやらないわけではないが、金がかかるし重たい棒を何本もそろえなければならないのが面倒だからだ。ただゴルフに関してはタモリこち亀両さんなど前言を翻してゴルフ好きになる人がいるので私もまだ分からないが。

というわけで全然スポーツはやらない。

そして見るほうにも興味がない。
私はサッカーの試合を通して全部見たことがない。絶対に寝てしまう。90分もじっと見てられないのだ。代表戦でも退屈で仕方がない。昔は野球をたまに見ていたが、もうここ10年くらい見ていない。大阪人だが阪神が勝っても負けてもなんとも思わない。プロレスも一時熱狂的に見ていたが最近は全然見なくなってしまった。

スポーツを見るのに興味がないのは明らかに母親の影響を受けていると思う。
私の母親は非常に冷めているところがあり、何でも切り捨ててしまう。昔初めて父親が母親をデートに誘ったときの食事が京都の湯豆腐だったらしい。父親はオシャレな空気を作ろうとがんばったのだと思うが、母親は「この人なにかっこつけてんねん。湯豆腐なんか味気ないもん食べたないわ。肉食べさせろ、肉。」と思ったという。この話を聞いたときは自分の価値観を貫ける母親を尊敬したが、その後20回以上同じ話をされるのでもうさすがに飽きてきた。
当然スポーツにも容赦がない。中学生の時にテレビで相撲を見ていた私に「こんな太った裸のおっさんがぶつかってんの見ていったい何が面白いの?だいたいこの人たちなんでチョンマゲなの?」と聞いてきた。「何が面白いの?」と聞かれると説明するのは非常に難しい。仮に外国のどこかで「太った裸のおっさんのぶつかり合い」を熱狂して見ている国があると知ったら「うーむ、確かにこの光景は違う意味で面白いけど彼らは真剣に面白がっているな・・・なぜだろう」と異文化理解の難しさを実感することだろう。そう考えていると妙なものを見ている気になってきて見るのをやめてしまった。
またマラソンを見ていたら「車もある時代にわざわざしんどい思いして長い距離走ってる人見ていったい何が面白いの?私なら42キロも走らんと電車乗って移動するほうが楽でええわ。」と言ってきた。うーむ、そう言われるとやはり何が面白いのかよく分からない。
執拗に「このスポーツ見ていったい何が面白いの?」攻撃を受けてきたために、どれも面白くなくなってしまった。そのくせ母親は上沼恵美子やしきたかじんの番組は爆笑して見ている。私が仕返しに「この番組いったい何が面白いの?」と聞いても、「この面白さが分からんの?あんたアホやな。」と言われてしまい、全く勝負にならない。私には負けしか用意されていないのだ。

というわけで全然スポーツは見ない。

こういうことを考えるとつくづく豪州に生まれなくてよかったと思う。
こっちはスポーツ狂なのだ。やるのも見るのも大好きなのだ。本当かどうか知らないがオリンピックにおける人口一人当たりのメダル数は世界一らしい。

盛んなスポーツは日本とちょっと違う。
非常に人気があるのがラグビーだ。一口に「ラグビー」と言ってもユニオンとリーグの二つがある。日本でラグビーといえばラグビーユニオンのことを指すのだが、こちらにはもう一つラグビーリーグというのがある。どちらも大層な人気を得ているのだが、当然のことながらルールが若干違うらしい。私はそもそもラグビー(ユニオン)のルールもよく分からないので、違いはちんぷんかんぷんである。二つの歴史はウィキペディアこのサイトに詳しい。
ちなみにラグビーリーグの試合はこんなの↓。
http://video.google.com/videoplay?docid=8688708056145983012


さらにオーストラリアンフットボールというのがある。私はたまたま会社の同じ部署の同期に「大学時代にオーストラリアンフットボールをやっていた」という珍しいやつがいたので、名前を聞いたことはあったが、初めて見たのはもちろんこちらに来てからである。これは簡単に言えばボールが楕円形で手で運んでもよくてタックルをしてもよいサッカーという感じなのだが、それじゃラグビーとどう違うのかと聞かれるとこれもよく分からない。ラグビーと違って前にパスしてもいいような気がする。↓こんな感じ。
http://video.google.com/videoplay?docid=-8570906179270518088

この3つは非常によく似ている。なぜここまで似通ったスポーツがそれぞれプロリーグがあって人気もあるのか謎だ。競技人口や人気が分散して困らないのだろうかと思ったが、少なくとも人気の点に関しては全く問題なさそうだ。なぜならスポーツ大好きの豪州人は3つともしっかり見ているからだ。

日本人の感覚でいえば、野球とソフトボールとキックベースに全部プロリーグがあるという感じである。キックベースですよ、キックベース。夢がMORIMORIですよ。夢がMORIMORIのスポーツにプロリーグがあるといえば、どれだけ豪州人がスポーツ好きか分かってもらえると思う。

クリケットも人気がある。これは英連邦各国で非常に盛んなスポーツであり、豪州もその例外ではない。これもルールが全く分からない。ボールを投げて打つという点では野球に近いが、ピッチャー(というのかどうか知らないが)は助走をつけて投げているし、なんかバッター(というのかどうか知らないが)が打ったボールは後ろに飛んでいくし、訳が分らない。


飲み屋のほとんどはテレビがあって、これらの試合をずっと流している。大きな試合がある日はみんなでバーや友人の家に集まりビールを飲みながら試合を観戦する。
私も同居人に誘われてよく見るのだが、どのスポーツも何人プレイヤーがいるのか、どうなったら何点入るのか、などが全然分からず、つい「おっさんが必至になってボールを奪い合ってるの見ていったい何が面白いの?」と聞きたくなってしまうが、さすがにそれは封印している。