熟女とオーストラリア2

着替えを終わった熟女連は動物園に入っていった。

来る前は「私カンガルーやらコアラやら興味ないからね」と「それを言ったらオーストラリアに何も残らないんですけど・・・」という辛らつなコメントをしていた1号・2号・3号であるが、実際に見てみるとそれなりに楽しいのではないだろうかという予感はあった。

というのも一つには私自身がそうだったからだ。実際にコアラを見る前は「あんなもん見てなにがおもろいねん、動かへん動物なんか『動物』という定義から間違ってるわ」くらいに思っていたが、見てみると意見を一変させた。非常にかわいいのだ。もしコアラが「ねえ、あのバッグ買ってよ。ねえ買ってってばー。」くらいのことを言ったら「え、いくらなの?コアラちゃんはおねだりさんだなあ」などと気持ちの悪いことを言いつつ買いかねないとすら思った。

もう一つには1号には前科があるからだ。1号は自分が犬を買う前「冬とかに犬に服着させてる人おるやろ。アホちやうか。かわいくないし犬嫌がってるやん。」と世間の小型犬愛好家を敵に回しかねないことをよく言っていた。ところが今はこのざまである。

だから熟女連もそれなりに楽しめるのではないかと思っていたのだ。

まずは爬虫類・両生類コーナー。私はこちらに来るまで全然知らなかったが、変な爬虫類や両生類がたくさんいる。特にヘビについてはオーストラリアは世界最強の名を欲しいままにしている。私がシドニーで行った動物園にはこんなパネルが飾ってあった。

世界の毒ヘビランキングのうち金銀銅はオーストラリアが独占らしい。「男子3千メートル障害におけるケニアか!」と思わずツッコミを入れてしまいたくなるような圧勝ぶりだ。

この動物園にもよく分からないのがいっぱいいた。それぞれの名前が分からない。
1号はこのトカゲみたいなのを見て「この色のセーターええやん」と言っていた。

これは動物園のものではなくて動き回っていた野生トカゲ。

謎。この動物は謎。1号は「恐竜?」と言っていた。恐竜は絶滅してます。

明日生まれ変わってこれになってたらちょっと悲しい。サンショウウオみたいな感じか。

これはメジャーなワニ。2号は「あれ作り物やろ」と疑っていたが本物です。

ヘビに驚いたふりをする1号。このとき「恥ずかしいから早く撮って」と何度も言っていた。

今回じゃないがシドニーにはこんな「これ、もしかしてツチノコでは・・・」と思わせる生き物もいた。

続いてはコアラゾーン。この動物園では脇役だが、やはり異常にかわいいコアラたち。



かわいすぎる。案の定「いやーん、かわいいわあ。でもじーっとして何考えてはんねやろ。」という1号たち。「コアラに興味ない」発言をひっくり返させたコアラ、お前の勝ちだ。

教訓4
おばちゃんは状況に応じて意見を変えることを怖れない


そして次はカンガルーゾーンへ。ここはカンガルーに自由に触れ合えるというのが一つのウリになっている。

お腹には赤ちゃんの手が出ているのが分かる。

「暴れへん?大丈夫?」と言いながらおそるおそる近づく1号。

微妙に距離を取りながらもカンガルーをなでなでする。今1号がまさにオーストラリアを満喫している!
続いては餌を買って食べさせてみた。「奈良の鹿みたいなもんやね」と2号。


世界で二番目に大きいオーストラリア独自の鳥エミューもいた。エミューはオーストラリアの国鳥らしい。エミューが前にしか進めないことから「前進あるのみ」という意味が込められているようだ。


かなり変な顔をしている。1号は「この顔よりは私の顔の方がええやろ?」と言っていたので「意見別れると思うけど、俺はさすがにおかんの方が勝ってると思うで」とヨイショしておいた。


一通り動物と触れ合ったところで、疲れてきたのでゴールドコーストの中心街へ戻ってホテルにチェックインすることにした。
「私ら寝れたらどこでもええから」という心強い発言を事前に聞いていたので私が取ったのはバックパッカーに毛の生えたような安宿。旅行会社の人には「この宿には普通日本人はあまり泊まりません。もう少しいいところに泊まります。」と言われていたのだが、「普通の日本人ではないからいいのです」と言って私が予約したのだ。だいたい寝るだけなのにいいホテルに泊まろうという考え方は私には全く理解できない。金が有り余っている石油王ならともかく庶民が無理していいホテルに泊まるというのはやめたほうがいい。

早速ホテルに入ると「あ、わりとええやん」とお褒めの言葉をいただいた。ありがとうございます。

教訓5
おばちゃんは寝られればどこでもいい

ホテルに入るとさっそく机の上にお菓子を並べて床に座る3号。

「あんた、日本のお菓子持ってきてあげたで。こういうの、恋しいやろ。」
「どんなん?」

「こ・・・、これはしぶすぎるんちやうか。日本にお菓子はたくさんあったのに、なんであえてコラーゲン酢こんぶやねん!」
「あんたコラーゲン酢こんぶ嫌いか?」
「いや、コラーゲン入りなんか食べたことないわ。ええ年して肌気にしてんのか。」
「ええやんか。コラーゲン。ごちゃごちゃ言わんと食べなさい。私も食べよ。」

「酸っぱ!」
「それがええねやんか!分からん子やな。」

この後も出るわ出るわ、日本のお菓子。

しかし、なぜか全て豆類か酢こんぶ。黒豆の甘納豆やら豆入りの煎餅やらナッツやら。
以下豆をめぐる私と3号の攻防。
「お豆さんはほんまに美味しいなあ。」
「なんでそんなに豆ばっかり持ってきてんねん。しかもなんで『さん』づけやねん。」
「あんたお豆さんの美味しさが分からんようでは男としてまだまだやで。」
「俺はハッピーターンの方がええわ。20代で甘納豆好きって渋すぎるやろ。」
「あんた、お豆さんのこと全然わかってへんな。」
「友達か!」
「コーヒー飲みながらナッツ食べてみ。最高やで。あれは出会いや。豆同士の。」
「な、なに、その名言。しかもなんで倒置法やねん。ちょっとうまいし。」

教訓6
おばちゃんは豆を好む。しかもなぜか『お豆さん』と敬意を込めて「さん」づけされている。

教訓7
おばちゃんはたまに名言をはく。

続いては熟女連がゴールドコーストのビーチを歩く。