あのオアシスは本物か?

あなたは砂漠を歩いている。食べ物はとうになくなり、最後の水も尽きた。もう死ぬかもしれないという思いが頭をよぎる。「お母さん、生んでくれてありがとう。でももう私はここで終わりです…」と思ったときに、向こうにオアシスのようなものが見える。最後の力を振り絞ってオアシスに向かって歩き出すが、一向に到着する気配がない。そしていよいよ本当に力尽きて倒れてしまったところを、ラクダのキャラバンが通りがかり、なんとか命拾いする。そしてそのキャラバンは隣国へ向かう王子の一行だった…。

なんていう感じで始まる物語があるかもしれないが、そんなことはどうでもいい。私が問題にしたいのは「あのオアシスはなんだったのか?」ということだ。

これは二つ考えられる。一つは「蜃気楼」。もう一つは「幻覚」だ。

蜃気楼の仕組みというのはよく分からないが、大気の密度が異なる場所で水平線の向こう側に隠れて見えない風景が見えるようになるらしい。これはありえる。

そしてもう一つの可能性は幻覚だ。人間の脳は自分に都合のよい情報を作り出すことがあるらしい。非常に寒いところで気を失いそうになったときに急に「温かいなあ」などと言いながらストーブの幻覚を見たりするのをテレビや漫画などで見たことはないだろうか。もう一人がびっくりして「おい、大丈夫か。気を確かに!」とか言っているアレである。(私のイメージだとなぜかこの組み合わせはのび太ドラえもんだ)

砂漠のオアシスがどちらのケースなのかは分からない。


ただ私が豪州で見たのは蜃気楼でも幻覚でもなく単なる勘違いだったようだ。

先日街を歩いていると、ふと「日本」にいるような感覚に襲われた。
確かに日本で見たはずの光景が目に飛び込んでくるのだ。
「いや、そんなはずはない。私はもう豪州に来ているんだ」と自分を強く言い聞かしたが、この感覚は消えない。
いよいよ私もおかしくなってきたか。「お母さん、生んでくれてありがとう。でももう私はここで終わりです…」と思ったときに向こうに見えたのはオアシスではなく、こんなものだった。